Multicoreのヴィンテージ品よりFivecore 黃箱 1950年代です。
前置き
Multicoreはドイツのデュッセルドルフに本拠地を置くHenkel社のブランドの一つであります。
このMulticoreというブランドは1940年あたりから歴史があります。
しかし歴史にとらわれない先進的な考え、先見の明を持っており
RoHSが話題になっていない頃から鉛フリー製品を制作するなど実力も兼ね備えたブランドです。
歴史のある会社でありますが今回はヴィンテージ品で銘品のFivecore黄箱を紹介します。
レビュー
まず、作業性についてヴィンテージのため保存状態によるところもありますがフラックスが
蒸発せずしっかりと保存された状態のものについては現行品と変わらずはんだづけしやすいです。
ファイブコア構造ではんだに5ヶ所穴が空いた中にフラックスが注入されているためかは
不明ですがヴィンテージハンダの中ではトップクラスに作業性が高いはんだです。
ただ、KR-19RMAのような高い濡れ性はありませんが年代を考えれば
相当な技術力だったのではないかと個人的には推測しております。
はんだを溶かすのにも高い熱量を必要とせず、こて先は320度程度で設定すれば
問題なく扱えるかと思われます。
コネクタ類のはんだづけについては全く問題はありません。基板へのはんだづけについては
ヴィンテージ品のため耐久面の保証はできません。それ以前に貴重であるため
基板に使うことは贅沢と言えるかもしれませんね。
音質については鉛入りはんだの中では高い水準で音の良い部類になるかと思われます。
高音についてはKR-19RMAとくらべてレンジが広く繊細です。当時は英国で生産されており、
イギリス製に見られるリッチ感のある高音でこの点は非常に優秀です。中音域の
情報量はKR-19RMAの方が多く密度感はあるものの、音に曇りはなく解像度は高めです。
このすっきり感のおかげか定位についてもよどみがなくKR-19RMAよりもはっきりと
前後感のある音を鳴らしてくれます。また、滑らか目な音で良い意味で甘さがあります。
低音域はやや量感があり固まってでてきます。そのため組み合わせる線材によっては
くどさを感じることがあるかもしれません。その点が唯一惜しいところですが
テフロン皮膜系や単線系などの線材以外ではそうした固まってでる性質が
上手く溶けこむ可能性もありますので組み合わせ次第かと思われます。
全体的に甘さもなくすっきりリッチ系な音ですがやや線材を選ぶ傾向はあります。
低音に加えて、高音も物によってはピークがでてきつく感じることもあるためその点では
難しいはんだであると言えるかもしれません。しかし、性能としては高く音の良いはんだと
いえると考えておりますのでビンテージに興味のある方はぜひお試しいただきたい一品です。