
ベイヤーダイナミック社のT1 2nd genを昨年の11月に購入しました。
環境を整えつつ聞き込みをしましたので簡易的なレビューをします。
購入までの経緯
T1を購入する以前はAD-2000を愛用していました。かれこれで7年ほど使用していました。AD-2000も断線して修理をしたり、パッドが傷んだりして使用感が出てきたことが理由の一つです。また、据え置き用途で癖の少ない機種を模索していたところ過去に憧れの機種であったT1が2ndとなって登場しており、T1が出た頃と比べても購入し易い価格になっていたことも大きな要因です。 T1 2ndを当たっていたところ、箱に痛みがあるT1 2ndが7万円で販売されており、そのまま購入に至りました。
外観と機能

外見はライトなグレー・シルバー・ダークグレイ・ブラックと無彩色で落ち着いたデザインだと思います。奇抜な印象もなく、刻印でメーカー名やマークが記載されていたり、銀色でロット番号が刻まれていたりシンプルな中にアクセントがさり気なく効いています。無難な印象もありますが、安心して長く使えるような外観で有るようにも感じます。

スライダーは左右で4cmずつ動きます。ヘッドバンドをもってスライダーの調整をするとクッションがずれて外観異常が生じる可能性があります。ベイヤーダイナミックの刻印がある樹脂部分の箇所と金属のフレームに手を添えてスライダーの調整をすると、良い状態で長くお使いになれるかと思います。

外観からすると密閉型のように見えますが半開放型です。パッドはサラッとした肌ざわりで、パッドはやや硬い印象があります。しかしながら、フィット感はナチュラルで嫌味がなく顔の曲線に合わせてうまくフィットします。強く当たる印象はなく肌触りや感触を含めて不満はありません。しかしながら、音に関しては私の顔ではやや低音が漏れて物足りなさがあり、何かしらの対策がいるだろうと考えています。パッド内部はドーム上になっており、AD-2000のようなパッド内部が浅い機種のように耳が当たって装着感がきになるような感覚はありません。

ケーブルは布巻きで見た目にも高級感があります。取り回しは普通ですがヘッドホンケーブルとしてはベーシックな硬さで特に不満はありません。電線は7N OCC線を使用して、布巻きの被膜は「外部ノイズに強いテキスタイルコーティング」でノイズに強い構造であるとのことです。ノイズ対策については詳細が不明で懐疑的に感じていますが、純正のケーブルとしては日本のメーカーと同等以上に力を入れており完成度は十分に高いでしょう。
ケーブルはアンプ側は3.5mm(ネジ式の6.5mm)とヘッドホン側で3.5mmステレオプラグが2つ(R・L用)。3.5mmでポータブルやPC直差しなど手軽に使いやすくなりました。ですが、据え置き用途であれば6.5mm標準プラグの品質を上げたり、他のバランスプラグに変えたりするだけでも良い影響がでそうなようにも思います。

ソケットは3.5mmですがヘッドホンのハウジング部分の奥まったところに埋め込まれております。リケーブルのためにケーブルを自作する際にはプラグを選びます。海外製のプラグで「スリムプラグ」というものがあり、それであればカシメ部品もついているプラグで自作でケーブル作成もできるでしょう。他にもプラグの芯のみのものも使えないことはないですが、据え置き用途であれば耐久もある程度あったほうが快適かもしれません。
音の簡易レビュ-
視聴環境
自作PC→ifi nano iUSB3.0→Aune S16→HD-1L Advance→T1 2nd Gen
(補足)
ifi nano iUSBの電源はスイッチング電源を使用。
Aune S16のヒュ-ズはFLUTECH製に交換して,USBDACとして使用。
HD-1Lのヒュ-ズはISO CLEAN POWERに交換した。
電源ケ-ブル並びにDAC-AMPの配線は主にベルデン系を使用した。
PCのみ別電源を使用して,音源はVM環境を使用してCDParanoiaでリッピングした無圧縮音源で再生する。
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(高音域)
スライダ-や装着位置により聞こえかたは変わるもののこもった印象はありません。細い音も太い音をしっかり分けて再生できるうえで音のヌケも良いです。音圧の大小の表現や余韻が繊細でAD2000と比較して再生能力は高く感じました。高音が分離して鮮明に聞こえますが、中低域のバランスや高音自体のバランスを欠くと分離の良さが悪く作用してうるさく聞こえる点でデメリットもあります。環境整えて音のバランスをとれば特に問題はないものの、聞く人の感覚や環境によりうるさく感じることもあるでしょう。
(中音域)
AD2000とは異なりかまぼこな印象はなくフラット。音の明瞭度や密度、自然な広がりではT1 2ndは優れており、女性ボーカルの質感も柔らかくナチュラルであり、癖は少なくもそっけない印象は感じません。迫り来る中域や息遣いの鮮明さ、ノリの良さではAD2000は優れていてキャラの違いも現れています。一方で、T1 2ndは音の広がりや前後感など位置の見通しが立つため、繊細な音の距離感の変化や音楽全体の音の重なり方や質感などまんべんなく楽しむようなリスニングができます。強いキャラはなくナチュラルななり方が特徴というのも地味なのですが、聴き込んでいく中でその良さをゆっくりと感じていくようにも思います。
(低音域)
過不足はなく硬い音も柔らかい音もでます。のっぺりとした印象もないのですが、ヘッドパッドと顔の形状との相性で低音に物足りなさも感じています。低音の密度感を欠いたような印象で、軽くペッドホンを抑えるとちょうど良い聞こえ方をします。単にイコライジングしてももっさりとした印象になり、しばらくはうまく運用する方法を考案すべき状態ですが、中高域とのマッチングは良好で全帯域を通して一本筋の通った着実ななり方をしているように感じています。
(その他)
音の広がりは十分に広いです。HD800のような壮大でただただ広いなり方はしませんが、ポップ・ジャズ・ボーカルものを普通に聞く分には上下左右と十分に広く、前後の奥行きもあります。AD2000と比べると真面目な印象ですが不足感はありません。
(システム全体での印象)
音の粒感がなくなって音に柔らかさがあります。真空管のような柔らかさとはことなり、音がまんべんなく配置されているような密度と精緻を伴う柔らかさで、柔らかさの中に硬い音やわらやかな音など様々な質感の音が現れてきます。高音は分離して鮮明に現れてくるもののさらっとエッジが効いて抜けていき、嫌味がありません。さらなる音の厚みの追求と装着状態による高音や低音の変化を解決することが課題です。
(運用について)
T1 2ndは環境に影響されて出る音も変わります。はじめは高音が耳についたり、解像度が高いけど中域が薄く感じたり、低音がペラペラしたりなどしました。上流の環境・ケーブル・電源やその他細々した要素など、はじめはあまり手がついていなかったこともありうまく出ない状態でした。環境の粗やボトルネックとなるような大きな弱点があり、音のバランスを欠くと不自然な音が出る印象があります。インピーダンスが600Ωあり、アンプも環境も選び、手間がかかりますがなんだかんだで長く付き合う機種としては面白みがあるような気もしています。
まとめ
7万円で購入したのもあり非常に満足度が高く、システム全体で改善をしていくモチベーションにもなっています。前世代機では発売当初10万円を超えていて手を出しにくかったのもあり、まさかT1を手にすると夢にも思っていませんでした。長く使い続けていく上で環境もT1 2nd 自体も洗練とさせていけたら、音楽鑑賞もっと面白くなるのだろうと想像が膨らみます。これを機に据え置き(ヘッドホン)もゆっくりと力をいれていきます。

beyerdynamic T 1 2nd セミオープン型テスラテクノロジーヘッドホン